2013年7月15日月曜日

広域イーサネクストの最適化を図ってみる

ソフトイーサ株式会社さんが公開している「広域イーサネクスト」を活用し、実家とマンションを結んでいるのはここでも何回か紹介してきました。特に不満も無く利用してきたのですが、「利用環境の最適化を図れば、もっと速度が上がるんじゃね?」なんて考え、この3連休を利用して色々と検証してみました。その結果をここにまとめてみます。

で、まずは現在の利用環境をざっとご紹介。NICをintel製で固めてあるのは、蟹(Realtek)製のNICでは安定しなかったという経験があるからです。今回の検証では、この辺も改めて確認してみたいと思います。

<実家側接続PC>
・M/B:Intel DN2800MT
・CPU:Atom N2800(マザーオンボード)
・MEM:2GB(DDR3)
・NIC1:マザーオンボード
・NIC2:Intel PRO/1000 CT Network Connection(PCI-E)

<マンション側接続PC>
・M/B:ASRock A75M-ITX
・CPU:A4-3300
・MEM:2GB(DDR3)
・NIC:Intel PRO/1000 PT Dual Port Server Adapter(PCI-E)

 そして検証方法ですが、実家側接続PCに替えて、テスト用PCを設置します。で、WAN側のNICを「PRO/1000 CT」に固定した上で、LAN側のNICを色々と交換し、速度がどの程度違うのかを計測するといった次第。PC自体の性能による差も確認するため、テスト用PCは3台用意しました。

 <テスト用PC(その1)>
・M/B:ASUS E35M1-M PRO
・CPU:AMD E-350(オンボード)
・MEM:4GB(DDR3)
・NIC:Realtek 8111E(オンボード)

<テスト用PC(その2)>
・M/B:GIGABYTE P55A-UD3R
・CPU:Intel Core i7-860
・MEM :4GB(DDR3)
・NIC: Realtek 8111E(オンボード)

<テスト用PC(その3)>
・M/B:ASUS P8Z68V PRO/GEN3
・CPU:Intel Core i3-2100
・MEM:4GB(DDR3)
・NIC:Intel 82579(オンボード)

 肝心のNICですが、あいにくストックがそれほど多くなく、かき集めても9種類ぐらいしか出てきませんでした。

 















内蔵タイプは5種類。左側はPCI-E接続で、定番のintel「PRO/1000 CT Network Connection」 と、玄人志向「GbE-PCIe3」。右側はPCI接続で、intel「PRO/1000 MT Desktop Adapter」、intel「PRO/100S Desktop Adapter」、そして懐かしの3com「3C905-TX」 となります。


















外付けタイプは3種類。左から、発売されて間もないLogitec「LAN-GTJU3」、BUFFALO「LUA3-U2-ATX」、そして正体不明のアダプタ(バルク扱い)です。ただせっかく用意したのですが、LAN-GTJU3」は新し過ぎて広域イーサネクスト上で認識されず、また正体不明のアダプタも、認識はするものの正常に動作しませんでした。

さて、長々と書いてきましたが、ようやく実際の検証に移ります。速度測定には定番の「iperf」を使い、マンション側のPCをサーバとして動作させ、実家側のクライアントPCから速度測定を行います。間を開けて計3回計測し、出来るだけ測定時のネットワーク混雑が影響しないように心がけました。

まずは テスト用PC(その1)における結果です。速度の単位はMbpsですので念のため。太字は計3回の計測での最高値を示します。

テスト用PC(その1) 結果
NIC      1回目 2回目 3回目  備考
----------------------
8111E     63.0  63.1  63.3   オンボード
1000CT    65.0  63.6  64.0
PCIe3     63.4  63.1  63.0
1000MT    59.2  61.2  61.7
100S     66.9  66.8  67.0
3C905    NG   NG   NG   正常動作せず
LUA3     78.9  78.0  79.7

どのNICも似たり寄ったりの結果かと思いきや、USB接続のLUA3-U2-ATX」が何故か良い結果を出しています。実は間違いかと思って再計測もしたのですが、やっぱり同じような結果となりました。なお、「3C905-TX」では一応使えるのですが、速度が数Mbpsしか出ておらず、結果としては「NG」と判断しました。


続いてテスト用PC(その2)における結果を。

テスト用PC(その2) 結果
NIC      1回目 2回目 3回目  備考
----------------------
8111E     79.8  85.3  85.1   オンボード
1000CT    80.0  84.6  84.7
PCIe3     76.2  82.0  84.5
1000MT   79.1  84.1  83.0
100S     80.0  85.4  86.1
3C905    79.0  81.6  81.7
LUA3     81.3  82.1  82.1

今回もNIC毎の結果は似たり寄ったりですが、テスト用PC(その1)での結果と比べると値が大きく向上しており、マシンスペックの差が大いに影響していると考えられます。また、テスト用PC(その1)では正常動作しなかった「3C905-TX」がきちんと結果を出しています。


そしてテスト用PC(その3)における結果です。


テスト用PC(その3) 結果
NIC      1回目 2回目 3回目  備考
----------------------
82579     84.8  85.2  85.4  オンボード
1000CT    82.6  82.5  82.5
PCIe3     79.6  84.4  84.3
1000MT   82.2  80.2  81.0
100S     79.0  83.2  84.3
3C905    NG   NG   NG   正常動作せず
LUA3     78.1  82.5  82.7

結果自体はテスト用PC(その2)と似たような感じに。やはりマシンスペック的にも同じような物なので、それがそのままテスト結果として出た形なのでしょう。そして「3C905-TX」はまたもや正常に動作しませんでした。これはあくまで推察なのですが、テスト用PC(その1)と(その3)のチップセットはPCIに対応しておらず、ブリッジチップ経由での接続となっています。この部分で何らかの相性問題が出たのでは無いでしょうか。

で、今回のテストの結論は以下の通り。

1.NICによる性能の違いは殆ど無い 
 
 PCI-EとPCI、1000Mと100Mなど、カタログスペックには違いはありますが、広域イーサネクスト上で差は殆ど確認できませんでした。ただ、長期的に使用し続けるとなると、優位な差が出てくるかも知れません。

2.速度を上げるにはある程度のPCスペックが必要

 IPv4とIPv6の変換をソフトウェアで行う以上、マシンスペックがそれなりに無いと辛いようです。公式ホームページには「余ったPCでOK」とありますが、速度を出すにはそれなりのPCを用意する必要があるようです。少なくともC2D世代以上のPCは欲しいところでしょう(それとて1万円程度で購入することは出来ますが)。

3.非力なPCではBUFFALO「LUA3-U2-ATX」を

 非力なテスト用PC(その1)でも、LUA3-U2-ATXの速度の高さは目立ちました。公式ホームページでも推奨されてますし、外付けで導入もしやすく、かつ安価なことから、広域イーサネクストでの使用には最も適したNICかもしれません。


※追加検証

今回のテスト結果を参考に、実家側接続PCにLUA3-U2-ATX」を利用することにしました。ただ「WAN側とLAN側のどちらに使えば良いのか?」と疑問に思い、様々に組み合わせで速度を計測してみました。

実家側接続PC 結果
 WAN     LAN    1回目 2回目 3回目
----------------------
オンボード 1000CT   55.1  62.9  63.2
オンボード LUA3     81.3  81.7  81.5
1000CT   オンボード 57.0  64.6  65.1
1000CT   LUA3    74.1  81.5  82.2
LUA3    オンボード  59.2  59.2  59.5
LUA3    1000CT   60.1  58.8  59.5

この結果を見ると、LAN側にLUA3-U2-ATX」を利用した場合、良い結果が出ています。逆にWAN側に利用した場合は全く振るわないのは実に不思議です。それにしても、ATOMという非力PCでありながら、そこそこの速度を出せてしまうLUA3-U2-ATXはかなり使い勝手の良いNICです。開発元でお勧めするだけのことはあります(もしかしたら何らかの最適化が図られている可能性もありますが)。


さて、色々と検証してみましたが、なかなか有意義な結果を見いだすことが出来ました。特にUSBタイプのLUA3-U2-ATX」が優れているというのは驚きでした。今まで、USBタイプのNICはあまり使い物にならないという認識でしたが、それを改める必要がありそうです。

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